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更年期障害をすでに経験した人で、症状があまり重くなかった人については「経験上」の意見として「更年期のコトは時間が経てば良くなるわよ」なんて言葉を聞くことがあります。
確かに、症状が重くなかった人にしてみたら、更年期は「一過性の」ちょっとした体調不良で済んだのかもしれないのですが、症状が重い人や気持ちが苦しい人にとっては、「更年期なんて…」と軽く考えることはできません。
どんな体調不良についてもそうなのですが、殊更、更年期や女性特有の体の不調というのは、同じ女性同士であっても気持ちを共有することは難しい問題なのです。
そうしたこともあって、できれば更年期障害でしんどいな…という時は、周りの経験者の意見を最優先で取り入れるのではなく、客観的に医療機関で自分の体について相談をすることがベストです。
しかし、医療機関で相談=病院を受診するとなると、どんな検査があるのかとか、治療はどのように行うのか、また治療費はいくらくらいかかるのかということが心配ですよね。
ということで、今回は更年期障害と病院での治療の具体的内容についてご紹介していきます!!
病院で治療できる範囲とできない範囲があるってホント?
更年期障害、治療の前に
更年期障害の「治療」をするということは、「医師」の診察を受けるということですよね。
では、更年期障害で治療を受けるにはどういった診療科を受診すればよいのでしょうか?
もし通院できる範囲の場所に「更年期障害専門外来(更年期専門外来)」があれば、この専門家にかかるのが1番です。
ただ、こうした診療科を持つ病院やクリニックがある地域ばかりではないですよね。
そうした時は、更年期障害の治療には「産婦人科」や「婦人科」を訪ねるのが良いでしょう。
日本の女性はまだ「かかりつけ」の婦人科をもっている人が少ないのですが、できたら女性の体は「生涯」にわたって丁寧に相談できるクリニックなどがあった方が良いので、これを機にかかりつけの信頼できる婦人科を探すもの良いですよ。
更年期障害で治療できる範囲ってどういうこと?
さきほど、更年期障害を治療するには「更年期(障害)専門外来」を受診するのがベストとお伝えしましたが、それがなぜかというと、更年期障害には「身体的な症状」と「精神的な症状」が併発するから、と言えます。
この身体的な症状と精神的な症状のために、専門外来でなければ「身体症状」と「精神症状」を分けて受診科を分けなければいけないことがあるかもしれないからです。
他にも、体質的なことを鑑みて、西洋医学よりも東洋医学からのアプローチの方が体に合うこともあるので、そうした人は漢方医学を積極的に取り入れている病院を探した方が良い場合もあります。
婦人科で治療できる範囲
上でも少し触れていますが、更年期障害には身体的な症状と精神的な症状があるので、婦人科で治療を受ける際にも、婦人科で処方できる薬には限度がある場合もあります。(医師なので自分の専門外の科についても薬が処方できないことはないですが、やはり専門外のことについては専門科の医師が詳しいですからね)
更年期障害で女性ホルモン由来の症状緩和に関しては、婦人科の医師が診察をして、薬を処方できたり、生活改善を指導することができます。
しかし、きっかけは更年期障害だったとしても、そこから精神的な症状が重くなっていた場合は、そこについては心療内科などの医師の方が的確な治療を施せることの方が多いでしょう。
このように、更年期障害の治療については複合的に治療方針を考えたりする必要があるので、できたら「更年期(障害)専門外来」に通える方が治療は一括してできることが多いので、患者としては楽に治療を続けられます。
保険診療という「範囲」
更年期障害の治療を考える際に、もう一つ考えておきたい「範囲」があります。
それは「治療費」の範囲です。
更年期障害というのは基本的には「保険診療」の範囲内で治療を受けることができるものです。
ただ一部の漢方などを使う場合には、時として保険外診療になることもないわけではありません。
さらに鍼灸などでの治療やカイロプラクティックについても、保険外診療になる場合があるので、自分がどういった方向で治療を受けたいのか(例:薬を積極的に使うとか、できたら使いたくないとか)ということは医師としっかり話し合うことが大事です。
更年期障害で病院に行くとまずどんな検査をするの?治療はどんなもの?
さて、ここまでに更年期障害と様々な「範囲」についてご紹介してきました。
ここからは、具体的に、更年期障害においてはどんな治療や検査が行われるのかということをご紹介していきます。
更年期障害で病院を訪れた際に行われる「検査」
更年期障害について相談・治療をするために病院を訪れると、更年期(障害)専門外来でも婦人科でも、先ずは検査を行います。
どんな検査を行うかというのは次の通りです。
問診
現在の月経の状態や、今の月経の状態になるまでにどんな変化があったかなど自身の月経に関する質問。
過去の病歴や現在、患者がおかれいてる環境についての質問。
血液検査
問診の結果(問診の結果に問わない場合もある)をみて、血中ホルモンの量を調べるために血液検査を行う。
内診
膣の状態をみたり、子宮筋腫や子宮内膜症などの有無をみる。また子宮頸がん・体がんのチェックも行います。
骨量検査
更年期障害の場合は、ホルモンが減ることで骨粗しょう症になる女性が大変多いため、更年期障害の相談で訪れた人にはほぼ行われる検査です。
こうした検査を経て、血中のホルモン量や精神的な症状などを鑑み、更年期障害と診断されると薬や食事などの方法を適宜用いながら治療を進めていくことになります。
更年期障害の治療には3つの「主流」がある
更年期障害の治療を受ける場合、知っておいて欲しい治療の方向性が「3つ」あります。
この3つの治療法は、一部の漢方薬処方などを除いては保険適用範囲内で治療を受けることができます。
その1)ホルモン補充治療=HRT
更年期障害というのは、とっても簡単に言うとエストロゲンという女性ホルモンが急激に減少することで起こるものです。
ですから、治療についても簡単に考えれば「減ったホルモンを補充すれば体調は回復しやすくなる」ということが言えなくもありません。
ということで、やはり更年期障害の治療で1番主流なのは「ホルモン補充治療」である「HRT」という治療方法です。
HRTでは、基本的に減少しているエストロゲンを補充するのですが、諸事情によって子宮を切除していない場合(=子宮が体内にある場合)には、エストロゲンと共に黄体ホルモンであるプロゲステロンも投与します。
先にもお伝えしましたが、保険適用範囲内の治療なので、自己負担が少なく、更年期障害の治療としては「根源的」な部分にアプローチするやり方なので、更年期障害の改善では最も期待が高い治療法です。
☆HRTが有効に作用する症状の例☆
ホットフラッシュ・急な発汗・動悸・息切れ・知覚異常や自律神経の乱れ・骨粗しょう症の予防や改善・萎縮性膣炎や性交痛などの改善
その2)漢方薬を用いた治療
一昔前までは「漢方薬」というと「民間療法」に近いものとみられていた節もあるのですが、現在では漢方は科学的に治療効果のあるものとして、西洋医学の医師たちも積極的に導入しています。
中でも、更年期障害をはじめとする「婦人科系の体調不良」には、漢方薬が用いられることが多く、この記事を読んでいるあなたも、更年期障害以前に冷えや月経不順について、漢方を利用したことがあるかもしれませんね。
☆更年期障害で処方されやすい漢方薬の1部☆
- 桃核承気湯…月経不順やのぼせに効果あり
- 柴胡加竜骨牡蛎湯…精神系に働き、更年期特有のイライラなどに効果あり
- 加味逍遥散…更年期障害に対して最も良く処方される漢方の1つ
- 桂枝茯苓丸…頭重や冷えなど女性特有の症状に対する代表的な漢方
- 当帰芍薬散…冷えやイライラなど、これも女性特有の症状に処方される代表的な漢方の1つ
その3)精神的な方面からのアプローチ
身体の症状よりも、精神的な症状の方がツライとか、精神的な症状が主であるという人、さらには「その1」で紹介したHRTによる治療が効きにくい場合には、抗うつ薬や抗不安薬を使用した治療が行われます。
精神的な症状が重い場合は、こうした薬による治療ももちろん効果的ですが、周囲の人の理解や専門のカウンセラーによるサポート・カウンセリングも同時に進めていくと治療効果が高まるとされています。
その他の治療法
上でご紹介した3つの主な治療法の他にも、更年期障害の治療では「生活改善」や「食事による体調の改善」を進めていく場合もあります。
クリニックによっては食事と栄養素のバランスを管理しながら治療を行う「オーソモレキュラー療法」という治療法を用いているところもあります。
この療法では、先ず詳細な血液検査を行ったうえで、結果をみながら個人に出ている症状を引き起こす異常や要因を探し、治療をしていきます。
☆オーソモレキュラー療法について…☆
オーソモレキュラー療法=orthomolecular medicineというのは、栄養療法とか分子栄養学などともいわれる療法のことです。
日本ではまだまだ実施している医療機関がとっても多い…というわけでないのですが、アロマテラピーなどの補完療法や有機農法にこだわるマクロビクスなどの考え方が進んでいた海外では1960年代頃から、精神疾患領域の治療として応用され始めました。
そして今では、オーソモレキュラー療法の応用範囲はほぼすべての医療分野に及んでおり、特にホルモンの影響が強い更年期障害などの症状には効果が高いと言われている療法となってます。
更年期障害に対する薬、治療費ってどうなってるの?
更年期障害の治療で使う薬というものは大体どこの病院でも名前が違っても成分はほとんど変わらないというのが普通です。
なぜなら、更年期障害での投薬治療で使われるのはほぼ「女性ホルモン(エストロゲン)」であるからです。
更年期障害の治療では、減少したエストロゲンを補充することで体調を整える方法がシンプルかつ1番効果の高い方法なのです。
エストロゲンの補充では、子宮がある場合の人と、子宮を切除しているなどしている人では使う薬が異なってきます。
子宮がある場合の人だとエストロゲンにプロゲステロンも配合されているホルモン剤を処方するのが通常になっています。
更年期障害の治療で使用される薬
エストロゲン単剤=エストロゲンのみが補充されるホルモン薬
※薬の形状…主な成分(薬剤名: )の順
錠剤…結合型エストロゲン(薬剤名:プレマリン錠)、エストラジオール(薬剤名:ジュリナ錠)
湿布薬…エストラジオール(薬剤名:エストラーナ、フェミエスト)
塗布薬…エストラジオール(薬剤名:ルエストロジェル、ディビゲル)
エストロゲン黄体ホルモン配合剤
錠剤…エストラジオールorレボノルゲストレル(薬剤名:ウェールナラ配合錠)
湿布薬…エストラジオールor酢酸ノルエチステロン(薬剤名:メノエイドコンビパッチ)
エストロゲンとプロゲステロンを別々に服用・使用する場合における「黄体ホルモン(プロゲステロン)だけの製剤は次のものが代表です。
黄体ホルモン製剤
錠剤…酢酸メドロキシプロゲステロン(薬剤名:プロベラ、プロゲストン錠、ヒスロン錠)、ジドロゲステロン(薬剤名:デュファストン)、ノルエチステロン(薬剤名:ノアルテン錠)
更年期障害の治療と治療費
更年期障害の治療には薬(ホルモン補充剤)が使用されることが多く、また初診では血液検査や内診、クリニックによっては超音波検査などをすることもあるため「結構お金がかかるんじゃ…?」と不安になりますよね。
では更年期障害での治療費はどの程度なのかをご紹介しておきます!
更年期障害の治療は何度か触れてきましたが「保険適用」されるものなので、社会保険などの保険制度に加入していれば実質かかっている費用の3割程度の負担で済みます。
更年期障害で病院に行くと、大体は初診で約3千円~5千円程度、薬代が1か月1500円~3000円程度とそこまで高くありません。
再診であれば血液検査などがない日もあるので、大体3千円以内の診察代で収まる人がほとんどのようです。
ということで、更年期障害の治療を病院で受けた場合は、ほとんどの人が薬代を含めて5千円くらいの費用で収まっていると言えるでしょう。
治療費は安いとは言ってもやっぱりお財布的に厳しいという方、薬の副作用が心配という方はサプリメントでのケアもプラスしていくのが賢い選択です。
今は本当に優秀なサプリメントがたくさん出ていますし、どれも効果の高いものばかりです。一度手に取ってみることをおすすめしますよ。