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40代後半を迎えた妻がやたらとイライラしている、情緒不安定な時期が多くなった…こうした変化を見て「彼女もそろそろ更年期か?」なんて他人事みたいに考えていませんか?
女性の更年期は閉経という変化がもとになって起こることですが、実は月経のない男性にだって更年期はあるのです。
しかも、男性の更年期は女性のようにある程度の年齢で起こるものというわけではなく、若い男性にも容易に起こることなのです!
今回は男性に起こる「男性更年期障害」について原因や症状、有効な対策などをご紹介していきます。
男性更年期、その名は「LOH症候群」
冒頭でもお伝えしましたが、女性の更年期と言うのは「閉経」に向かうことによる「女性ホルモンの急減」が原因の心身の不調です。
一方で男性の更年期と言うのは女性の「女性ホルモン(エストロゲン)」に対して男性ホルモンである「テストステロン」の量が大きく関係してきます。
女性の健康には女性ホルモン(エストロゲン)が深く関わっていて、このエストロゲンというのは、周期的な月経サイクルにも深く関わっています。
このため、40代後半~50代半ばにかけて、女性が閉経を迎え始めると、女性の体内ではエストロゲンの分泌量が急減し、女性は心身のバランスを一時的に崩してしまいます。
これは本人の努力とか根性とか、そうした精神論でどうにかなるものではなくて、自然の摂理なのでどうにもならないことです。
では男性の身体に多く分泌されているテストステロンはどうでしょうか?
男性の更年期障害にもやはりこのテストステロンが深く関わっていることには変わりありませんが、男性は女性のように周期的な月経サイクルなどはありませんよね。
そして、子どもを持つことも、人によってはかなり高齢でも可能です。
男性には女性のような「閉経」というものはありません。
ではどうして男性に更年期障害が起こるのでしょうか?
男性ホルモン=テストステロン働きとは
思春期を越えた男性の体内で多く分泌されるようになる男性ホルモンである「テストステロン」は、精巣で生成されるホルモンで、筋肉や骨を大きくたくましくさせる働きがあります。
他にもテストステロンには、ネガティブな感情が湧いてくるのを抑える働きがあったり、異性を惹きつけるフェロモンを発生させたりします。
危険な状況でも、その危険を顧みずに男性が物事に立ち向かっていけるのは、このテストステロンの働きが大きいと言えるでしょう。
さらにもっと物理的で身近な部分だと、テストステロンは陰茎の勃起に関わる一酸化窒素(NO)と関係が深いことから、性欲の強弱やいわゆる「朝立ち」などにも関わってくるのです。
そして…欧米では髪が少ない男性がモテるって話を聞いたことはありませんか?
髪が薄い男性というのは、男性ホルモンが多すぎて頭髪が薄くなると言われているので、欧米では頭髪が薄い=「男性」として魅力があると取られやすいのです。
テストステロンが減少する原因とは?
女性の更年期障害はエストロゲンの減少によって起こります。
そしてそのエストロゲンの減少は、閉経に向かうことで始まるわけです。
しかし、「生涯現役」という状況もあり得る男性という性別には閉経はありません。
ではどうして男性ホルモンであるテストステロンは減少してしまうのでしょうか?
加齢によるホルモンの減少
男性は女性のように閉経はありませんが、それでも男性も女性と同じく、加齢によって性ホルモンの分泌は減少します。
一般的に男性ホルモンであるテストステロンの分泌は、第二次性徴期から著しく増加します。
ちょうど小学校高学年から声変わりが始まって、20歳過ぎくらいまでに男性は「男っぽく」なりませんでしたか?
毛深くなったり、肩幅が広くなる、筋肉量が増えるなどはこのテストステロンが大きく関係しているのです。
そして、テストステロンの量と言うのは、女性のエストロゲンのように「ある時期を境に急激に減る」ということはないのですが、やはり加齢によって減少するものです。
- →20歳代 平均値 16.8(pg/ml)
- →30歳代 平均値 14.3(pg/ml)
- →40歳代 平均値 13.7(pg/ml)
- →50歳代 平均値 12.0(pg/ml)
- →60歳代 平均値 10.3(pg/ml)
- →70歳代 平均値 8.5(pg/ml)
上の数字はテストステロンの年代別平均値です。
20歳代の平均値と、70歳代の平均値ではほぼ2倍の違いがありますよね。
こうした加齢によるテストステロンの減少は、どんな人でも起こっていることで、こうした自然的な減少傾向というのは加齢が進んで急激に回復するということは基本的にありません。
ストレスによるテストステロンの減少
テストステロンは、女性のエストロゲンほど急激な減少はしませんが、それでも加齢が原因で減少することは先にお伝えした通りです。
ただ、テストステロンは加齢が原因で減少するだけでなく、ストレスによっても減少してしまうのです。
テストステロンは精巣(睾丸)から分泌されるホルモンなのですが、「テストステロンを分泌するように」と最初の指令をするのは大脳視床下部です。
そこからの指令は脳下垂体に届き、そこから次の指令が出て、最終的に精巣からテストステロンが分泌されるのです、
また、テストステロンを支配している神経は自律神経のなかの「副交感神経」です。
副交感神経はリラックスや楽しさを司っているので、食事や趣味、性行為など「楽しい」と思うことをしている時に優位になります。
しかし、緊張やストレスが多いとリラックスはできず、常に交感神経が刺激されているような状態になり、副交感神経への上手なスイッチができなくなります。
するとテストステロンは正常に分泌されなくなってしまうのです。
テストステロンが減るということ
ここまでにご紹介したように、男性ホルモンであるテストステロンは、加齢要因だけでなく、ストレス要因でも減少してしまいます。
女性ホルモンであるエストロゲンもストレスの影響を受けて減少するのですが、比較するとホルモン分泌に対するストレス耐性は男性の方が弱いと言えるかもしれません。
つまり男性の方がストレスの影響を受けてホルモン量を減少させてしまいやすいということです。
40代後半以上という、徐々にテストステロンの減少が心身の不調というかたちであらわれてくる年齢でなく、病的なものであれば、ホルモン分泌減少もきちんと治療をすることが可能です。
一方で、加齢によるテストステロンの減少は人によってかなり個人差があるもので、40代でも平均の半分ほどしたテストステロンの分泌がない人もいれば、80代でも30代の平均並みにホルモンの分泌を維持している人もいます。
ただこれは遺伝や体質によるものなので、どうしようもありません。
ちなみに加齢によるテストステロンの減少で心身に不調が出てくる、いわゆる男性更年期障害は「加齢男性性腺機能低下症候群=Late-onset hypogonadism(LOH症候群)」と言われています。
女性の更年期障害と同様に、更年期専門外来で受診することもできますし、男性専門外来がある病院もあります。
一般的には泌尿器科に最初に受診してみる人が多いようです(男性が体の異常を感じるきっかけが勃起不全=EDということが多いので)。
しかし精神的な症状を改善することを優先したい!という時は、泌尿器科に行ってもどうにもなりませんので、心療内科を受診することをおすすめします。
男性の更年期はどんな症状があるの?
女性の更年期ではのぼせや動悸と言った身体的な症状と、イライラやヒステリックと言った精神的な症状が有名ですが、男性の更年期(LOH症候群)ではどんな症状が出るのでしょうか?
そもそも男性ホルモンであるテストステロンは「行動性」を上げるようなホルモンなので、もしそもそも血気盛んな男性ならホルモンが減ることでちょっと穏やかになるのでは…?とか思うかもしれません。
でも男性ホルモンの減少はそんな「性格を穏やかにしそうで逆にいいんじゃないの~?」なんて言う単純なものではないのです…。
男性更年期の代表的な症状とは?
男性ホルモンが減少することで起こる男性更年期(LOH症候群)では起こる代表的な症状は3種類に分かれるとされています。
身体の症状
テストステロンは筋肉や骨の形成に大きく関わっているので、テストステロンが減少するというとは、こうした「男性としての身体の形成」がバランスを崩れるということになります。
テストステロンが減少することで最初に現れてくる身体的な症状は筋力の低下や筋力の低下に伴う筋肉痛、疲労感があります。
ほかには、女性の更年期と同じようにほてりや発汗異常、頭痛の増加やめまいなどもLOH症候群の代表的な症状とされています。
心の症状
テストステロンの働きの部分で少し触れていますが、テストステロンというのはネガティブな感情を抑制する働きがあるホルモンです。
ということは、テストステロンが減少すると、(健康面に関する不安も相まって)不安感が増大したり、ちょっとしたことでイライラするようになります。
男性ホルモンが減少すると血気盛んさが治まるんじゃ?と思いそうですが、実際には感情のコントロールがしづらくなって、以前にもまして激昂することが増えることもあるのです。
さらに抑うつ感や不眠、それらのことが続くために起こる集中力の低下や記憶力の低下も代表的な症状とされています。
性の症状
女性は閉経することで自分の女性性に自信を失うこともないわけではありません。
しかし一方で、ずっと続いてきた月経から解放されて「やっと終わったー」と喜ぶ気持ちがある人も多くいます。
けれども、男性はテストステロンの減少で男性っぽさが少なくなると不安を抱える人の方が圧倒的に多いですね。
年齢的に「性欲が弱くなったなぁ…」というのは何となく受け入れても、朝立ちの減少とかED、性行為中に勃起が維持できなくなる…という点については男性は人知れず深く悩む人が多いのです。
ただ、テストステロンが減少することで起こるこうした性の症状と言うのは、飽くまでテストステロンの減少が原因で起こっていることであるので、気になる際には一先ず専門科での相談をすることが大事です。
LOH症候群のセルフチェックをしてみよう!
ここまでにLOH症候群=男性更年期の原因や症状に関してご紹介してきましたが、すぐに病院に行くのは気が引ける…という人はまず自分で男性更年期のチェックをしてみてください。
下に17の項目があります。その項目に対して、非常に重い~なしまでで答えていきます。
点数は「非常に重い=5点」「やや重い=4点」「どちらともいえない=3点」「少しある=2点」「なし=1点」として計算をしていきます。
チェック項目
症状 | 非常に重い | やや重い | どちらともいえない | 少しある | なし |
---|---|---|---|---|---|
1)体調が総合的に思わしくない | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 2)関節や筋肉に痛みがある | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
3)ひどい発汗が(原因がなくても)ある | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
4)眠りが浅い、寝つきが悪いなど睡眠に関して悩みがある | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
5)眠っても疲れがとれず常に眠気があったり、疲労感が取れない | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
6)イライラしやすい | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
7)以前より確実に神経質になった | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
8)些細なことで不安感を抱くようになった | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
9)明らかに筋力が低下している | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
10)疲れやすいため行動力も減退している | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
11)憂うつな気分が続く | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
12)自分の絶頂期は過ぎたと感じる | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
13)もう限界だ、どん底にいるという感じがする | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
14)髭の伸びが遅くなった | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
15)性的能力が確実に衰えたと感じる | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
16)朝立ち(早朝勃起)の回数が減った | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
17)性欲が弱くなった | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
さて結果はいかがでしたか?点数別の判断は次の通りです。
- 50点以上
- 重度
- 37点~49点
- 中等度
- 27点~36点
- 軽度
男性更年期である「LOH症候群」に有効な対策は?
男性更年期はテストステロンが減少することで起こりますが、その判断の一部は血液検査で行います。
一般的には70代男性の平均値である8.5(pg/ml)というラインがテストステロンの血中濃度最低ラインとされています。
若い男性でもこの値を下回る場合はストレスや食生活などが原因で起こりえます。
40代半ば以上の男性であれば、食生活を見直すことでテストステロンの減少を緩やかなものにできる場合もあります。
ではテストステロンの減少を抑制するために取れる対策にはどんな方法があるのでしょうか?
食生活の改善
男性更年期になると、筋肉を作ることが以前より難しくなるので、肥満になりやすくなるのですが、肥満になるとさらにテストステロンの働きは抑制されてしまいます。
ですから、まず、食生活はバランスの良い食事に気を付けることが大切です。
「食べ過ぎない・よく噛んで食べる・ながら食いをしない」この3つはとても大切です。
ただ、たんぱく質を控えすぎるとテストステロンの原料となるコレステロールが減りすぎてしまうので、それはそれで大変です。
これらのことを踏まえると、やはり食生活はバランスを気を付けることが何より重要ということになるのです。
効果的な食材とは?
女性の更年期に大豆イソフラボンが良いというのは基本ですが、男性更年期にもこうした「効果的な食材」はあるのでしょうか?
答えは○。
男性更年期に効果のある食材として有名なものは「粘り系」の食材。
オクラや山芋、なめこなどの食材はたんぱく質の消化や吸収の効率を上げる効果があるので、ホルモンの活性化に役立つと言われているのです。
もしあなたのパートナーも女性の更年期に悩んでいるのであれば、2人で納豆を食べるようにすると、両方に効果的ですよ。
また最近は玉ねぎに含まれる成分が男性ホルモンを活性化するために効果的であると言われています。
食事の中でこうした食材を積極的に摂取すると良いでしょうね。
食生活の改善というのは、簡単なようで1番難しいポイントかもしれませんね。
どうしても食生活を改善していくのがなかなか難しい…と言う人は、更年期に効果のあるサプリメントなどを利用するのは便利です。
活力系のサプリメントもですが、今は男性ホルモンを活性化してくれるようなサプリメントもたくさん販売されています。
特にマグネシウムや鉄分など、普段摂りにくいミネラル系の栄養素やビタミン系の栄養素はサプリとして多くの種類があるので、自分が1番摂れていない栄養素を見つけて補充するようにすると良いでしょう。
生活習慣の改善
男性更年期になるとよく見られる症状に「睡眠障害」がありますが、実は多くの男性が「テレビを見ながら」寝たり、またはミュート状態になっていてもテレビが一晩中ついているということがあります。
これは質の良い睡眠をとるためにはとっても悪いことです。
きちんとした睡眠をとるために先ずしたいのは、寝室(寝る場所)をリラックスしやすい環境にすることです。
そして、睡眠を促すホルモンをたくさん分泌するために日中に太陽を浴びることも大切です。
太陽を浴びるとセロトニンというホルモンが分泌され、このセロトニンはリラックスを深くしてくれたり、睡眠を誘うメラトニンに分解されて質の良い睡眠を得ることができるようになります。
他には、適度な運動をすることも大切です。
それは、男性ホルモンが筋肉を刺激されると活性化するものだからです。
ウォーキングなどの有酸素運動は肥満予防にも役立ちますし、軽めのストレッチやスクワットは筋力の低下を防ぐことに役立ちます。
そして、これは男性ホルモンの活性化に最大と言っても良いほど重要なことですが、「リラックス」をすることです。
男性ホルモンはそもそも楽しいと感じることをしている時やリラックスしている時に分泌されるものです(質の良い睡眠中にはたくさんの男性ホルモンが分泌されています)。
ストレス過多で緊張する場面が多い現代社会ですが、少しの時間でも自分が楽しいと思える時間を持つようにすることが、男性ホルモンを分泌するためにも、毎日に張り合いをもつためにもとても大切になってきますよ。