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更年期になると、ほとんどの女性が心身に対する何らかの不調を経験するとされています。
身体の不調では「ほてり」や「のぼせ」、「頭痛」などがよくある症状で、こうした不調は実際に「身体に」現れる症状なので、本人も「もしかしたら更年期?」と気づきやすい症状です。
一方で心へ現れる更年期障害の症状には「落ち込み」や「情緒不安定」、「抑うつ」、「憂鬱」などがあるのですが、こうした症状はすぐには「更年期だからだ!」と結びつかないのが現代日本です。
というのも、精神的な波というのは現代社会ではどんな人でも多かれ少なかれ抱えているので、何だか気分が冴えない…ということをすぐに更年期などと結びつけることが難しいからなのですね。
しかし、更年期の情緒不安定や憂鬱感をそのまま放置しておくと、その症状は「うつ」へと進んでいきます。
今回は更年期障害と併発しやすい「うつ」についてスポットを当てていきます。
更年期障害とうつが併発しやすいのはなぜ??
更年期障害で精神的な不調が出てくると、多くの場合は次のような症状が出てきます。
- 情緒不安定
- イライラ
- 八つ当たり
- 落ち込み
- 焦燥感
- 怒りっぽくなる
こうした症状の中でもイライラや八つ当たり、怒りっぽさなどは「外に向かって」現れることの多い症状なので、ある意味ではうつになりにくい症状と言えます。
しかし、情緒不安定や落ち込み、焦燥感は負の感情がどんどんスパイラルしていって、自分自身に負の感情が向かうので抑うつ状態からうつになりやすくなるのです。
更年期障害でうつ症状が出てくるのはどうして?
更年期障害というのは、そもそも女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少することで、女性の心身のバランスが崩れてしまうことを指しています。
更年期にエストロゲンの減少でホルモンバランスが崩れてしまうと、女性は精神的にストレス耐性が弱まり、感情のコントロールが通常時より困難になります。
これはサプリや薬などでエストロゲンの補充をしない限りは、どんな女性にもおこる心の状態です。
また、更年期の時期というのは女性にとって「年代特有」の悩みが増える頃でもあります。
例えば子どもの進学や独立、親の介護、自分や夫の仕事上での環境変化などですね。
こうした環境的なストレスは、更年期によるホルモンバランスの乱れにかなり大きく作用して、さらに情緒不安定な状態を加速させてしまうのです。
今まで築いてきた生活や環境が、更年期の心身の不調で大きく変わり、さらに人生の節目によるストレスが加わると、その変化に耐えられない心が悲鳴を上げます。
これは特に真面目にコツコツ頑張るようなタイプの女性の方が大きな情緒不安定を起こしやすいとされているのですが、それもそのはず。
真面目な人というのは急な事態の変化にすぐには慣れられないので、そうしたストレスに耐えられない!という心の声が情緒不安定や抑うつになって現れているのですね。
更年期うつになりやすいタイプ
ここまでに少し触れていますが、更年期うつにはより「なりやすいタイプ」という性格の人がいます。
しかも更年期うつになりやすいタイプというのは、そもそも更年期でなくてもうつを発症しやすい人ともいえるので、自分の性格はどうかな?ということで一先ず下の項目をチェックしてみてください。
更年期うつや通常のうつを発症しやすい人のタイプ
- 真面目
- 完璧主義
- 責任感が普通の人より強い
- 物事を悲観的にとらえやすい
- 仕事上などで責任ある立場にいる
- 夫婦間で問題を抱えている
- 子どもが近年独立した
- 親(義親)の介護問題が悩み
- 老後に大きな不安がある
どうでしょうか。これらの項目に当てはまるものは多いですか?
なかでも真面目とか完璧主義、責任感が強いなどは自覚しやすい性格だと思うので、今からでも少しずつ物事のとらえ方を変えていくと、更年期の気分の持ちようも改善していくはずです。
更年期うつかどうかチェックしよう
あなたが、そろそろ自分も更年期かも?と思っているのであれば、現状は少しずつ情緒不安定な波などが起こりつつあるかもしれません。
ただ、それが本当に更年期による情緒不安定なのか、ちょっとした気分の波なのかは自分ではわかりづらいです。
ということで、以下に「自分が更年期うつかどうか」を調べる項目を並べました。
もしその項目で4つ以上のチェックがつくなら更年期うつの可能性大ですので、速やかに心療内科や更年期専門外来、婦人科などに相談をしましょう。
☆更年期うつチェック☆
- 気分が落ち込む
- 好きなことにも関心がなくなった
- 疲れやすくなった
- よく泣く(無性に涙もろい)
- イライラしやすくなった
- 配偶者との関係に悩みがある
- 親(義親)の介護について悩みがある
- 老後に心配がある
- 几帳面
- 少しのことでクヨクヨしがち
- 完璧主義
更年期障害でうつになったらどうやって改善していくの?
症状としては更年期うつも通常のうつもあまり変わらないので、目に見えるような違いはほぼありません。
例えば睡眠障害や倦怠感、憂鬱感、頭痛にめまいと言った症状は更年期障害の症状なのですが、通常のうつ病の症状とも共通しているのですね。
そしてこうした更年期障害の症状というのは、更年期うつを引き起こす要因になっているのです。
この点も通常のうつと更年期うつは似ていて、通常のうつも最初は睡眠障害や倦怠感、憂鬱感などから始まることが多いとされています。
ただ、更年期うつは通常のうつと違い、心身性の病気の一種なので、実は身体的な要因さえ取り除くことができればそのほとんどが改善に向かいます。
具体的には、先ずは更年期障害で現れている症状をホルモン補充治療で改善すると、体調が良くなるのと並行して精神的な状態も良くなっていく…という感じです。
こうした更年期障害の治療の際に、適度な運動や周囲の人の温かい支えがあると、更年期うつというのは加速度的に改善することが多いと言われています。
他にも漢方薬を用いた治療やホルモン補充薬の代わりに更年期に効果のあるサプリメントを服用することで、身体的な症状も精神的な症状も改善させることができることもあります。
色々ある更年期うつの改善方法
更年期うつを改善したり、治療の効果をより高めるには色々と知っておくと役立つ方法があります。
深呼吸をする
更年期うつでも通常のうつでも初期の段階で問題になりやすいのが「睡眠障害」です。
この睡眠障害を改善するには、セロトニンという脳内の神経伝達物質をしっかり活性化することが重要です。
セロトニンの分泌を確実にするためには、腹式呼吸が効果的。
普段から呼吸を大きく深く意識し、腹式呼吸で過ごすようにするとホルモンの働きが正常に近づき、体調を整えることに役立ちます。
太陽光を少しでも浴びる時間をとる
日焼け防止を徹底したい人にはちょっとおすすめしづらいのですが、セロトニンの活性化を考えると避けられないのが「太陽光」の存在。
人間は太陽光に当たるとセロトニンの分泌が活発になるのです。
しかも太陽に当たることで「当たらない暗さ」とのけじめがはっきりしてきます。
明暗のけじめのついた生活ができると、周囲が暗くなってきたときに、睡眠を促す「メラトニン」が分泌されやすくなります。
こうなるとつまり明るい時は活発に動いて、暗くなると眠くなる!という生活リズムがはっきりできてくるんですね。
これこそが更年期うつを打開する大切な方法と言えます。
食事でセロトニンを補給する
更年期にはエストロゲンの補充治療法というがありますが、そこで肝心のセロトニンは補充されるかというと、そんなことはありません。
できたら食事中にセロトニンの材料となる「トリプトファン」という成分を積極的にとるようにすると◎!
トリプトファンはナチュラルチーズやごま、牛のレバーや鶏肉、豚肉、パスタにほうれん草、バナナなどに多く含まれているので意識して摂取すると良いですね!
更年期うつと通常のうつ病の違いは?
ここまで更年期うつについて特徴や改善方法をご紹介してきましたが、最後に更年期うつと通常のうつ病の違いについてお伝えしておきたいと思います。
これまでの内容のなかで少しだけ触れていますが、更年期うつと通常のうつ病の最大の違いは、更年期うつは心身性の病気なので、身体の不調を改善することでうつ状態も改善することが多いという点です。
もっと言うと、通常のうつ病は日々の波として比較的体調が良い日があったとして、その状態が2~3日続いたとしても、根本的にうつ病そのものが改善することはありません。
飽くまで通常のうつ病というのは精神的な病気であり、脳の機能異常によって起こっていることだからです。
つまり、通常のうつ病というのはうつ病を引き起こしている多大なストレス原因から遠ざかり、適切な薬物治療や食事、生活リズムなどを総合して行わないとなかなか改善は難しいものということです。
一方で更年期うつは身体の不調が改善すれば、うつ状態も改善することが多いので、ここは本当に大きなポイントと言えるのです。
ただし、更年期うつの場合も、通常のうつの場合も、周囲の人がうつ状態で苦しんでいる当人への対応について、それなりの配慮があるというのは共通事項となります。
通常のうつ病の人に「励ます・責める・怒る」という対応をすることは絶対的なNGであると言われているのですが、これは更年期うつの人にも当てはまることなのですね。
通常のうつも更年期うつも、本人が頑張るとか頑張らないとかそういうことが問題になっている病気ではなく、どちらもホルモンバランスや脳の神経伝達物質の異常などで起きている「本人にはどうしようもないこと」が原因なのです。
ですから、間違っても「気持ちの問題」とか「気合が足りない」なんて言葉を発するのはやめてくださいね。
その他、更年期うつと通常のうつ病との違いというのは「発症の違い」という点があります。
通常のうつ病は若い頃から発症することが多いのですが、更年期うつはその名の通り45~55歳という更年期に「更年期障害の症状を伴って」発症するのがほとんどなのです。
ちなみに…更年期というのは女性だけでなく男性にもあり、近年は男性の更年期に起きる「男性の更年期うつ」も問題になっています。
男性の更年期は加齢による男性ホルモンの減少で起こるのですが、身体的な症状に環境的なストレスが重なると更年期うつを発症してしまいます。
さらに男性の更年期うつは、そのまま老人性うつなどになることもあるので(男性の更年期は女性よりも高齢で現れることもあるので)高齢の男性が「何だか精神的にしんどいな」と思ったら、迷わず男性更年期外来などを訪ねることをおすすめします。
うつのケアと同時進行で、更年期の症状を軽くするために、食事から摂取する栄養素に注意を払う必要があります。
なかなか毎日の食事だけでは補いきれない栄養素が多いと思いますので、そういったときにはサプリメントを上手に活用することがおすすめですよ。
身体の栄養バランスが整って健康な状態だと、うつへの抵抗力も高まります。更年期時に飲みたいサプリメントもチェックしてみてくださいね。